夜人【ヨルヒト】さん

「何か来たわよ」

止める間もなく、母親が携帯を開く。

画面から、水が溢れだした。

ぼたぼたとこぼれる水に混じった藻が、カーペットに落ちてべしゃりと音を立てた。

「変わったメールねぇ……」

母親が呟く。

「お母さん、早く捨てて! 早く!」

画面を見ていた母親が、ゆっくりとトキコを見た。

血の気のない真っ白な顔の中で、見開かれた目が黒い穴に見える。

「何をそんなに騒いでいるの?

折角友達が届けてくれたのに」