夜人【ヨルヒト】さん

携帯の隙間から水が滲みだした。

水滴となり、母親の指先からカーペットへと零れ落ちる。

「特にチサエちゃんがもうひどい顔色で。真っ青だったわ。

サナミちゃんも」

「やめて!」

悲鳴を上げ、トキコは耳を覆った。

「それ捨てて! 携帯捨てて!」

「ええ?」

母親が怪訝な表情になる。

「せっかく届けてくれたんじゃない」

「ダメ! 早く捨てて!」

トキコの叫び声を遮るように、携帯がなった。

メールの着信音だった。