夜人【ヨルヒト】さん

ベッドの上に立ち上がり、息を切らせながら、トキコは布団を見つめた。

不規則に盛り上がった布の山は動かない。

心臓が高鳴り、こめかみがズキズキと痛んだ。

(追いかけて来た……ここまで……)

「トキコ?」

ドアをノックする音。

ガチャリとドアが開き、母親が顔を出した。

「何やってるの?」

ベッドを見上げて呆れたように言い、トキコへ右手を差し出す。

そこには、トキコの携帯があった。

「今チサエちゃんとサナミちゃんが来てね、忘れ物って言ってたわよ。

二人とも顔色悪かったけど、何かあったのかしら?」