夜人【ヨルヒト】さん

がたがたと震える肩を自分の両手で抱き締め、トキコはうずくまった。

荒くなった呼吸音と、心臓が内側から胸を叩く音が耳の奥に響く。

「ごめん思い出しちゃった? 本当ごめん」

再びユキオミの手が肩に触れる。

普段なら鬱陶しいであろうその温もりが、今は数少ない支えに思えた。

「大丈夫……です……」

漏れそうになる悲鳴を飲み込み、切れ切れに呟く。

エミカ、チサエ、サナミ、夜人。それぞれの死に顔が、断片的に浮かんでは消えた。

髪をかきむしる手を、ユキオミがそっと押さえた。

「髪、せっかく綺麗なのに痛んじゃうよ」