夜人【ヨルヒト】さん

「…………」

目を閉じ、夜人が首を振る。

「夜人さん」

奥の個室から、僅かに苛立った声がした。

「トキコに二人を返してあげて」

「…………」

夜人が頷く。

バチン!と紐が弾けた。

個室の扉を拘束していたロープの一本が、爆ぜ切れている。

バチン! バチン! と音を立て、次々とロープが解ける。

全てのロープが切れた時、扉が傾いだ。

二つの扉が、外側に倒れてくる。