夜人【ヨルヒト】さん

怒鳴りながら、トキコはずかずかと足を進めた。

「ダラダラとくだらない……」

こと、と言いかけた言葉が途切れた。



一番奥の個室が、目の前にある。

蛍光灯の光が届かないそこは、ひどく暗い。

壁のフックから吊り下がっているものが、黒い塊に見えた。

羽音が、時折聞こえる。

大きな蝿が、トキコの目前を掠めて飛び、塊へ止まる。

もつれた毛の間から、腐敗して緑色に変色した皮膚が見えた。



「ね……」

だらりと垂れ下がった手足は動かない。

「私……動けないの」