夜人【ヨルヒト】さん

顔を起こそうにも、首が動かない。

夜人がサナミの手から硫酸の瓶を優しく奪い取り、エミカに渡した。

大きな手がサナミの脇を支え、ゆっくりと床に横たえる。

天井を見上げ、サナミはまばたきをした。

(苦しい……なんか……息が……)

唇が虚しく動き、喉がひゅうひゅうと鳴る。

「呼吸も徐々にできなくなる」

夜人の声だけが耳に届いた。

視線を必死で巡らせるが、姿は見えなかった。

暗い天井だけが、圧迫感を持ってサナミの上にある。

「持って、あと15分というところ」