夜人【ヨルヒト】さん

憎しみを込めて振り下ろそうとした手が、何かに掴まれて止まった。

勢いでこぼれた硫酸が、床に落ちてじゅっと音を立てる。

「なっ!?」

動かない右腕の方を振り返る。

知らない男子学生が立っていた。

全身がびっしょりと濡れ、青ざめた表情でじっとサナミを見下ろしている。

左手でサナミの手首を掴み、右手にサナミが落としたメスを握っている。

「キャハハハハハハ!」

エミカが甲高い嗤い声が響き渡る。

「やっぱりね、そんなことだと思った!

いじめる奴って絶対反省しないもん」

「っ、離して! 離せ……!」

逃れようともがくが、びくともしない。

瓶の中で、硫酸が揺れた。