ヤンデレ兄弟と同居しているが、もう限界。

「あ……」




床に寝そべる私と、私を押し倒すように馬乗りになっている棗。わあ、下から見上げても棗ってかっこいいなあ……



そ、そうじゃなくて!これは俗に言う床ドン……?!



自分が今どういう体制なのか気づき、顔は真っ赤になり、何も言えなくなってしまった。

しかし棗は満更でもなさそうな顔をしているような……いや、そんなわけないよね。




「棗、ごめん、どい……」




なぜか言葉を遮るように、口を手で抑えられた。目をぱちくりさせる私に、棗は「向日葵ってさ、可愛いよね」と呟く。




「すっごく、可愛い。ドジなところも含めてさ」




背筋がぞわりとした。普通に可愛いと言われたら嬉しいものだが、今の棗の可愛い、はどこか違う。

言葉の裏の裏の裏くらいに、どす黒い何かが隠されているような、そんな声。素直に喜べるモノではなかった。



それっきり何も喋らず、棗はただ私を見下ろしていた。もう行こうと言いたかったけど、意外に強い力で口を塞がれていて、できなかった。

腕を振り払おうか……そんなことさえ考え始めた頃、「おい」救世主が現れた。




「………兄さん」
「こんなところで何してるんだ。もう帰る時間だろう」




突如現れた楓さんに驚いたのか、棗の手の力が緩まったので、身体を押し退けて起き上がった。

どうしても警戒で、棗を睨んでしまう。そんなことしちゃ、ダメなのに。




「お前、向日葵に何かしたのか」
「してないよ。ちょっと転けちゃっただけ。いやあ、ごめんね、向日葵」
「私こそ、ごめんなさい」




思わず目線が下にいく。恥ずかしさとか、疑問とか、色んな感情で混乱しているというのに、棗はとても涼しげな顔をしていた。




まるで、何もなかったかのような。