「まだなんかあんのか?」
---グイ ドン
あ゛ぁ?
なんだよ、この状況わよ。
なんで俺が壁に押し当てられてんだよ。
しかも逃げられないように、人の股の間にちゃっかり膝突っ込んでるし。
「で、あんたは何がしたいんだよ。男なんか壁に押しやってよ。
あんた、まさかそういう趣味なの?」
「はぁ?んな訳ねぇだろ。
一つ聞きたいことがあるんだよ。」
「なーんだ。面白くねぇの。
で、何なの?聞きたいことってのは」
「面白がんなよ。あんた、女だろ」
「組長さんの弱みは欲しいじゃないのよ。
なんで、俺が女な訳?
それにさ、裏の人間がそんな軽々しく答えるわけねぇじゃんか。
あんた馬鹿じゃねぇの?」
「喉仏がないし、体のライン見たらわかるだろ。」
「は?あんたこの格好で喉仏とか見てんの?」
というのも、俺の仕事の時の格好はダッボダボのパーカーのフードを被って、黒のマスクという、何とも怪しい出で立ちだ。
「俺も男だ。それくらいかるだろ。
で、どうなんだよ?」
だから、そんなに軽々と答える裏の人間が何処に居るってんだよ。

