「……っ」
いつも彼女がカメラ越しに見ているもの。
「僕、ばっかり」
僕が生クリームを塗っているところ。
僕が何かかき混ぜているところ。
僕が生地をこねているところ。
僕が、僕が。
そして、僕が作ったケーキの写真。
「千世ちゃん…」
そのふっくらした唇に、自分のものを寄せてしまいそうになる。
彼女が瞳を閉じると、そんな感情が襲ってくる。
彼女の見ているものは、僕?
僕だけなの?
「……あ」
違う。
一枚だけ、あの子の写真。
元気よく笑う、男の子。
僕をにらんだ、千世ちゃんと同じクラスの…
消したい。
彼女の瞳にうつるのは、僕だけでいい。
僕だけがいい。
「…ごめんね」
そんなこと言えない。

