君は小さく笑った。目じりによるしわや、右側だけにできるえくぼに、ドキッとした。
君は僕の質問には答えず、店を出ていく。僕もそのあとを追い、店を後にした。
じんわりと背中に貼りついたワイシャツが汗を吸う。
緊張してるんだな、自分でも分かった。
君はもといた場所に腰掛けると、ラベルをはがし、勢い良くビー玉を押した。
シュワワワと小さな泡がはじけて消えて、君はそれをのどに流し込んでいく。
ゆっくり動く喉の部分にも、汗が伝う頬にも、少し透けたワイシャツにも、僕は君の魅力を感じて、直視できなかった。
男なんだから、多分そういうところで身が疼いたのだけれど、それがどうしてもやるせなかった。
君を見た時に、綺麗だ、とか美しい、とか、そういう感情以外を持ちたくなかったんだね、あの頃は。
そうやって、どうにか自分を綺麗に見せようとしていたんだ。
「理由は、必要?」
「え?」
「理由って、所詮後付けだと思う」
君が突然言い出すものだから、僕は随分と混乱した。
僕は、原因から結果が現れるように、理由があるから答えがあるんだとばかり思っていた。
それは多分、僕の両親がそういう人だからだろうけど。
「アツキ、好きな飲み物は?」
「え、好きな飲み物?うーん、コーラかな」
「じゃあ、なんでコーラが好きなの?」
「なんでって言われてもな、美味しいから?」
「ほら、後付けでしょ」
君はしたり顔で笑った。こんな時なのに、そんな顔もするのかと驚いた。
なにより君が、僕を言いくるめてしまうほど説得力のある事を言ってくるものだから、僕は何も言えず目を見張って君を見ていた。
確かに、何故好きなのかと聞かれて、美味しいからかな?と考えた。
後付けだ。まさしく。
「つまり、アツキの連絡先を知りたいと思ったことに理由は無いし、なにか理由をつけてほしいなら今から考えるけれど」
「ううん、いいや。後付けの理由なんていらないよ」
君はうん、とうなづくと、残り僅かになったラムネをくいっと飲みほした。
僕も水滴が浮かぶラムネを開け、シュワシュワと弾ける生ぬるいそれを流し込んだ。
ちりちりと、胸を焦がす。
君は僕の質問には答えず、店を出ていく。僕もそのあとを追い、店を後にした。
じんわりと背中に貼りついたワイシャツが汗を吸う。
緊張してるんだな、自分でも分かった。
君はもといた場所に腰掛けると、ラベルをはがし、勢い良くビー玉を押した。
シュワワワと小さな泡がはじけて消えて、君はそれをのどに流し込んでいく。
ゆっくり動く喉の部分にも、汗が伝う頬にも、少し透けたワイシャツにも、僕は君の魅力を感じて、直視できなかった。
男なんだから、多分そういうところで身が疼いたのだけれど、それがどうしてもやるせなかった。
君を見た時に、綺麗だ、とか美しい、とか、そういう感情以外を持ちたくなかったんだね、あの頃は。
そうやって、どうにか自分を綺麗に見せようとしていたんだ。
「理由は、必要?」
「え?」
「理由って、所詮後付けだと思う」
君が突然言い出すものだから、僕は随分と混乱した。
僕は、原因から結果が現れるように、理由があるから答えがあるんだとばかり思っていた。
それは多分、僕の両親がそういう人だからだろうけど。
「アツキ、好きな飲み物は?」
「え、好きな飲み物?うーん、コーラかな」
「じゃあ、なんでコーラが好きなの?」
「なんでって言われてもな、美味しいから?」
「ほら、後付けでしょ」
君はしたり顔で笑った。こんな時なのに、そんな顔もするのかと驚いた。
なにより君が、僕を言いくるめてしまうほど説得力のある事を言ってくるものだから、僕は何も言えず目を見張って君を見ていた。
確かに、何故好きなのかと聞かれて、美味しいからかな?と考えた。
後付けだ。まさしく。
「つまり、アツキの連絡先を知りたいと思ったことに理由は無いし、なにか理由をつけてほしいなら今から考えるけれど」
「ううん、いいや。後付けの理由なんていらないよ」
君はうん、とうなづくと、残り僅かになったラムネをくいっと飲みほした。
僕も水滴が浮かぶラムネを開け、シュワシュワと弾ける生ぬるいそれを流し込んだ。
ちりちりと、胸を焦がす。
