図書室の奥の方まで行くと相沢くんが急に振り返る。

「あ、あの。」
「はい?」
「す、好きですっ。」

え?...意味が分からない。私の隣に結々という可愛い女の子がいたのにも関わらず...私?

「えと。」
「あ、彼氏がいるのは知ってます。赤崎さんと友野くんかなりお似合いで入る隙がないのは知ってます。でも、伝えたかったから」

相沢くんは私の目を見て、好きですって。と付け加えて笑う。

「でも...私のどこを好きに...全て平凡ですし」
「最近は見てないんですけど...笑顔がとても可愛いとことか...好きです。平凡なんて。そんなことありません!」

とても真剣な目で私を見て言う。

最近は見てない。ね。
確かに最近は笑ってない。
正確に言えば“あの日”から。

中学3年生のバレンタイン。

「あ、あの。何回も言いますが友野くんがいるの知っているこで、好きだから付き合ってください。とかは言わないんで安心してください。」

考え事をしていると相沢くんは眉を下げて悲しそうに笑って言った。

友野と恋人...ね。
はっきり言って、友野は好きではない。
今まで交流も無かったし。
きっと遊び。
なら、相沢くんの気持ちを優先したい。

振られる気持ち。良くわかるから。

「付き合っても...いいですよ。」

私は相沢くんを見て小さく呟いた。

相沢くんは目をまん丸にして驚いている。

「でも、友野くんは...」
「あの人とは付き合ってないから。」
「え?」

もっと目を丸くする相沢くん。

だって。気持ちも無いのに付き合うなんて。
付き合ってないも当然でしょう?

「本当...ですか?」
「嘘をつくとでも?」
「いえ!そんな!でも、俺で...」
「いいんです。」

私が被せていうと、相沢くんは笑みを浮かべて「ありがとうございますっ」とすごく嬉しそう。

「あの...前の話し方に戻してくれてもいいんですよ?」
「え、あ。なら。戻すよっ!」

声をかけられた時からずっと気になっていた敬語。
昔は、敬語じゃなかったからかなり違和感があった。

「話し方戻すついでに、下の名前で呼んでも...いい?」
「え...と...いいですよ...。」
「じゃあ、俺の事も下の名前でっ!」
「はい」

こうして、私と彼...優良くんは“ホンモノ”の恋人になった。

もう。友野にまとわられなくて済む。