「ねぇっ!大雅くんと付き合うんだって?ついに...凜花が!恋をっ?」

「なわけ無いでしょ。馬鹿なの?」

そう言って、隣で浮かれてる結々を軽く叩く。

あれから、友野はしつこいし、女子からはかなり痛い視線を受けるし。かなり大変だった。
今は帰り。なんとか、「送るっ!」と言ってきた友野を追い払って結々と帰っている。

「えぇ!凜花!恋はしなきゃダメだよ!友野くんとかかなり相手いいじゃん!付き合ってるんだし、凜花も少しは学んだら?友野くんに!!」

結々はそう言うと「じゃばいばーい!」と言って曲がり角を曲って行く。
1人になった帰り道。
空は赤く染まってて“あの日”を思い出す。


恋なんて。私はしない。


そう決意した日を。

「泣きながら...帰ったっけ。」

誰もいない帰り道に小さく呟いた。

「いつの話?」
「...えっ?」
「あ、驚くとこ初めて見た!」

いつの間にか隣に立ってたのは、友野。

「なんでいるのよ。」
「んー、俺も家こっちだし。彼女さんと帰りたいし。」
「そ。」
「ところでなんで泣いてるの?」

急に肩を掴んで立ち止まった友野。

「泣いてなんか。」
「うそ。泣いてる。ほら。」

そう言って、いつの間にか流れていた涙を拭ってくれる。

「貴方には関係ないでしょ。」
「関係ある。彼氏...だし?話して?」
「嫌。それと別れて。あの時は離れてもらう為でしたし。」
「え!やだ。別れない。もう俺のだもん!」
「だもんとか気持ち悪い。」

私は友野から離れるために速めに歩き始める。

はずだった。

歩くために踏み出した足は確かに前に出ている。
でも、体は動いていない。

...右手首に異様な痛みを察知。

まさか。
そう思って後ろを向くと、友野が手首をバッチリ掴んでいた。

「離して。」
「嫌。」

いつも、学校でばらまいてる笑顔とは違い、真剣な顔で私の目を見る友野。

不意にグイッと友野の元へ引っ張られる。
トスンと私の体は友野の胸に収まる。

「きーめた。絶対に凜花を落とす。」

「貴方には無理。」

「できるっ!」

友野は耳元で「俺の女になる覚悟。しといてな」なんて低めの声で囁くとすぐに離してくれた。

その時、一瞬だけ、胸がドキンと跳ねた。

それからは、無理やり友野に家まで送られた。
そして、衝撃の事実を知らされた。

「あ、俺向かいの家。」

...向かいの家。へぇ。向かいの家。
なんて冗談。

咄嗟に向かいの家の表札を見ると『yuno』と書いてあった。

友野は、「じゃあ!明日朝迎えに来るね!」なんて笑顔で向かいの家に入って行った。

“向かいの家”に。

勘弁してほしい。こればかりは。

席が隣で...家が向かい。

神様。これは何かのいたずらですか。

いたずら。ですよね?