ホラー短編集

「ひ……っ!?」

　瞬間、視界が揺らいで眩しい光に包まれ、男の体に強い衝撃がかかる。

　一体何が起きている？　男にわかるのは背中に感じる焼け付くような痛みとガソリンのにおい。

　俺は引きずられているのか？

「と……っ止まれ！　せ、背中っ!!　背中が燃える！　頼む……止まってくれ!!」

　男は必死に懇願するが、一向に止まる様子はない。

　それどころか、男を振り払おうと蛇行運転をしている。

「やめ……ろ。やめてくれ!!　体が……千切れる……頼むから助け……っ!!」

　しばらくして男を引きずっていた車が止まり、ドアが開く音がする。

　助かった――。

「たの……っむ。た……すけ……て」

　やっと救いの手を差し伸べてくれた、と男は思った。

「……テメェ、しつけーんだよ！　いつまでもくっついてんじゃねーよ！」

　言い放ち、運転手らしき男は車体にくっついた状態の男の頭を何度も蹴り上げる。