なんで、私はあの人と同じ漢字を使うんだろう。

サイアク。

考えただけで、吐き気がする。

私は自分の顔が嫌い。

あの人に似ているから。

この顔のせいで、お母さんは私を捨てたから。

佐野悠奈 16歳。

高校1年生。

顔はごく普通。

性格も普通。

いたって普通の私には、世界一嫌いなものがある。

それは、男の人。

昔から男の人が嫌いだったわけではない。

むしろ、昔はよく男の子とかと遊んでいた。

だけど、あの人のせいで私は、男の人が嫌いになった。

「あ、きた!悠奈ーー!」

私の家の前で、ぶんぶんと手を振っているのは、親友の小池 千夏。

「千夏?どうしたの?」

不思議そうに尋ねると、千夏は心配そうに、

「さっき、悠星くんに呼ばれてたから、大丈夫かなって思って…。」

と、言った。

私はいい親友をもったなー。

「大丈夫に決まってるじゃん!
心配させるようなことなにもされてないし!」

と、元気に言う。