「おはよう、樹くん」

「オハヨ」

 樹くんは気怠そうにアクビをして、寒そうに首をすくめ、マフラーに顔を埋める。

「どうしたの?朝から元気ないね」

「朝だから元気がないの!
僕、体温も血圧も低いから朝が辛いんだよ」

私は樹くんの後ろを着いて歩く。

朝の冷たさは、生足にはキツい。
でも、お洒落は我慢だからね!
足を擦り合わせながら耐える。

「ふーん…あっ、美鈴先生!」

「えっ!?」

物凄い勢い良く、キラキラした顔で振り返る。

「うっそー」

「………チッ!……」

樹くんが凄い怖い顔をして、私を睨み付けて舌打ちをする。

「ちょっと、彼女にひどくない?」

「…うるさいよ」

言い捨てるみたいに呟くと、不機嫌そうにマフラーに顔を埋める。

「ねー、美鈴先生のどこがそんなに好きなの?」

「どこが?」

樹くんが目を細めて、私を睨み付ける。

えっ?何?マズイ事聞いたの??

「全部、全部に決まってるでしょ?
あんなに、清楚で奥ゆかしくて、控えめで、美人な人他にいる?いないよね?ね?」

「まあ、そうだけど。でも歳上じゃない。先生今26とかでしょ?9歳も上なんてさぁー」

「調度いい。僕煩い女の子大嫌いなの。だから美鈴ちゃんみたいに大人な人が理想なの」

「でも、年の差気にならない?」

樹くんが私から目線を外して、足下を見る。
そして、ちょっと、しょぼんとした声で答えた。

「気にならないよ。僕はね」

何でこんな切なそうな目をするんだろう。
樹くんの心をどれだけ、美鈴先生が占めているか分かる。

「君はさ、恋しないの?」

「えっ?」