昼休みの中庭で、
お弁当の蓋を開けた樹くんの反応がこちら。
「何、これ…岩??」
「ハンバーグだよ!!ひどい!」
樹くんが私の作ったハンバーグを箸で摘まむと、初めて見るかの様に不思議そうな顔をする。
「ちょっと焦げたけど、味は美味しいとお思うよ」
私の言葉に、疑い深そうな目をしながら、ハンバーグを小さくかじる。
「ちょっ!君これ!?ごほっ、ごほっ!!」
樹くんが凄い勢いで噎せながら、キョトンとする私を涙目で睨み付ける。
「あれ?口に合わなかった?」
「君、これ絶対、味見してないだろ!?
岩じゃない、炭だよ!炭!」
味付けはママがしたから美味しいはずだし、ちょっと焦げただけなのに樹くんてば、大袈裟なんだから。
私は自分のお弁当に詰めたハンバーグをかじる。
すると…
本当だ!炭だ、炭の味がする!
私は樹くんと同じ様に噎せ返る。
「ごほっ、ごほっ、ごめん!
まさかこんなに焦げてると思わなくて。」
「この、明らかに殻が混ざった卵焼きは何??
ニンジンのグラッセもカチカチだし…
こんなの食べさせられるとか、何の修行だよ」
「…ごめんなさい。お弁当作ったの初めてで…」
恥ずかしい!!
初めて作ったから、作るのにいっぱいっぱいで味見するの忘れてたー!
「あっ、これは美味しい」
お弁当の隙間を埋める為に入れた、家にあった京都のお漬物屋さんの沢庵。
樹くんはそれをポリポリ音を立てながら、美味しそうに食べてる。
「なんだ、お漬物かぁ…」
はぁ、せっかく彼女にしてもらったのに、
お弁当の1つも作れないなんて、私最悪だよ…
恥ずかしくて顔があげられない。
「ごちそうさま」
私膝の上に空っぽの樹くんのお弁当箱が乗せられてる。
えっ?…食べたの?全部??
「…無理しなくていいのに…」
「食べ物に罪はないでしょ」
ハンバーグあんなに苦いのに、ニンジンもほぼ生だし、卵焼きも殻が混ざってジャリジャリ言うのに、全部残さず食べてくれた。
優しいんだから…
「食べてくれて、ありがとう」
「今度は食べれるお弁当にしてね」
「ひどーい!!」
また作って来ていいんだ。
ありがとう。樹くん。