6月の花婿にさよならを[短編]




その後の夕飯の席でお母さんは、私の兄同然で小さい頃から面倒を見てきた爽ちゃんが結婚することが嬉しいのか、それについて随分と喋った。



2歳上の彼女の名前は、恵(めぐみ)さん。



2人は2年ほど前に爽ちゃんの趣味である写真がきっかけで出会い、爽ちゃんが一目惚れして、彼らしからぬ猛烈なアタックの末に交際が始まったらしい。



結婚式は6月の13日、恵さんの生まれ故郷である地域の、海辺の教会で行われるということだった。



「爽太君が結婚だなんて、なんだか本当に不思議な気分。

あんなに小さかったのに、ほんとに時が経つのってあっという間でびっくりしちゃう…」



お母さんは懐かしむような微笑みを浮かべて、それから私を見た。



「結羽も結婚式、行くでしょう?

可愛いワンピース、買ってあげるね。」



「…うん。」



お母さんは私の爽ちゃんへの恋する気持ちを、少しも知らない。



兄として慕っているだけと思い込んでいるから、年頃の娘が若い男の人の家に行くことにも反対しないんだ。



爽ちゃんだって、私を恋愛対象として見ていないからこそ、妹のように可愛がってくれている…その事実が、今はすごく胸に刺さった。