「…祝福なんて…出来ないよ…」
誰にも聞こえない声で、小さく小さく、呟いた。
歩みが段々とのろくなって、ついには立ち止まってしまう。
「…こんなに、大好きなのにっ…」
目に熱いものが込み上げてきて、視界が潤む。
瞼から零れた涙が頬を濡らした時、私はスイッチが切れたように泣き出した。
切ないよ…爽ちゃんを想ってる時間は、誰よりも長いのに。
悔しいよ…あんなに近くにいたのに、自分のポジションの居心地に依存して、爽ちゃんが本気の恋をしていることも、知らなかった。
「…ううっ………」
涙が後から後から、溢れてくる。
いつか届いたら、いつか伝えられたらなんて想ってた自分が、馬鹿みたい…
4歳年上の爽ちゃんがずっと手の届くところにいることを、信じて疑わなかった。
彼には彼の世界があったのに…どうして今までそのことに、気づけなかったんだろう。

![惚れてます、完全に。[短編]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)