6月の花婿にさよならを[短編]




「…祝福なんて…出来ないよ…」



誰にも聞こえない声で、小さく小さく、呟いた。



歩みが段々とのろくなって、ついには立ち止まってしまう。



「…こんなに、大好きなのにっ…」



目に熱いものが込み上げてきて、視界が潤む。



瞼から零れた涙が頬を濡らした時、私はスイッチが切れたように泣き出した。



切ないよ…爽ちゃんを想ってる時間は、誰よりも長いのに。



悔しいよ…あんなに近くにいたのに、自分のポジションの居心地に依存して、爽ちゃんが本気の恋をしていることも、知らなかった。



「…ううっ………」



涙が後から後から、溢れてくる。



いつか届いたら、いつか伝えられたらなんて想ってた自分が、馬鹿みたい…



4歳年上の爽ちゃんがずっと手の届くところにいることを、信じて疑わなかった。



彼には彼の世界があったのに…どうして今までそのことに、気づけなかったんだろう。