「なんだよ結羽、喜んでくれないのか?」



爽ちゃんが冗談交じりの声と表情で言う。



「俺の妹同然のお前だから、1番おっきなリアクション、期待してたんだけどなー」



…妹。爽ちゃんの口から出た言葉を心の中で反芻した。



そうだよね…爽ちゃんは私のこと、妹のような存在だと思ってる。



そして私も爽ちゃんを、本当の兄みたいに思ってる…と、思われてるんだ。



「…爽ちゃん、2年も付き合ってる女の人、いたんだ」



やっとの思いで、呟くように言うと、なかなかひどいなお前…と苦笑される。



「…だって、そうじゃん。

今まで色んな女の子と付き合ってきてたでしょ?」



「…まぁ、それは否定しないけど…」



「もー、今更私相手に取り繕ってどうするの?」



「それもそうだよなー」



「そうですよー」



気がついたら私は、いつもの調子で爽ちゃんに笑いかけていた。



心にぽっかり穴があいたみたいな気持ちなのに…ずっと自分の気持ちを伝えていなかった私だから、こんな風に取り繕えちゃうのかな。