「…さよなら、って…俺、旅立つわけじゃないぞ?」
「うん、そうだね。」
少しだけ困惑してみせる爽ちゃんに、私は悪戯っぽく笑い返した。
…この恋に、さようなら。
長く続いた片思いに終止符を打つ言葉だと知っているのは、私だけでいい。
届かずに儚く消えていく私の初恋は、とても切ないけれど。
少しずつ少しずつ、前に進めたらいい。
これから爽ちゃんと恵さんが愛を育むように、私もきっと、新しい恋をゆっくりと。
…その時は、実らなかったこの恋の分も、幸せにならなきゃね。
二度も見守る側なんて、嫌だよ。
幸せになって。幸せになるから。
そんな想いを胸の内に秘め、私はしばらくの間、爽ちゃんの隣で黙って海を見ていた。