6月の花婿にさよならを[短編]




「…結羽?」



ふと、大好きな声に名前を呼ばれる。



ゆっくりと振り返るとそこには、白いタキシードに身を包んだ花婿がいた。



「こんな所で結羽、1人で何してたんだよ。」



言いながら近づいてきて、私の横に並ぶ。



そして私がそうしているように海を眺めて、「綺麗なところだよな」と呟いた。



「…あ、桃のジュースとか向こうに置いてあるけど、飲まなくていいのか?」



真面目くさった表情でそう続ける爽ちゃんに、思わず笑みがこぼれる。



「ちょっと爽ちゃん、子供扱い?」



軽口を叩きつつ、今はいいよ、と首を横に振った。



「…爽ちゃんこそ、主役なのにどうしてここに?」



私の問いに、今度は爽ちゃんが苦笑する番だ。



「いやー、恵の準備に時間がかかるから、てきとーに時間潰しとけって言われちゃってさ。」



どこか楽しそうに肩をすくめる爽ちゃんの横顔は、幸せに満ちている。



私はまだその笑顔を見ると、少し切なくなってしまうんだ。