6月の花婿にさよならを[短編]




私はこの恋を、諦めなきゃいけない。



爽ちゃんと恵さんの様子に、そんなことを思った。



思いは届かないし、今更届けても、爽ちゃんを困らせてしまうだけで。



長く爽ちゃんを想ってきた気持ちに区切りをつけるなんて、そんなの出来るかなっていうのが正直だけど。



でもこんなに幸せで満ち足りた爽ちゃんの表情、見たことない。



私はそんな表情させられないし、きっと恵さんじゃなきゃ、爽ちゃんはこんなふうに笑わないんだ。



そのキラキラした表情に切なさを感じているのに、同時に私は、その表情が好きだと思ってしまった。



だから私には恵さんを憎むことができないし、爽ちゃんの結婚に対して否定的な態度をとることもしない。



今の私なら、胸の痛みを隠して2人を祝福することが出来そうだった。