6月の花婿にさよならを[短編]




爽ちゃんから結婚の報告を受けてから、私は爽ちゃんの家に遊びに行くのをやめた。



爽ちゃんは爽ちゃんで忙しいみたいで、連絡は来ないし送らない。



私だけがどんどん遠くなっていく距離を感じていて、時間はあっという間に過ぎ、結婚式の日がもうすぐそこに迫ってきた。



その日は日曜日で、朝から雨。



休日だからと昼までゴロゴロしていた私を、お母さんが1階から呼んだ。



「結羽ー、爽太君と恵さんが挨拶に来てるから降りてきてー!」



「分かった、着替えたら行く!」



咄嗟に返事をしたものの、爽ちゃんとも恵さんとも会いたくない、と思った。



だって爽ちゃんはきっといつものように「おう、結羽!」って明るくて、お母さんは2人の成り行きとか結婚式の予定とか、そういう話を聞きたがる。



大好きな爽ちゃんが大好きな女の人と、そんな空間に居なきゃいけないなんて…そんなの、嫌だ。



そう思ったけれどその一方で、恵さんに、礼儀がないとか我が儘だとか、少しでも思われたらそれも嫌だっていう自分もいる。



結局私はモタモタと部屋着から着替えて髪を整え、みんなが集まっているリビングへ向かった。