「結羽、俺、来月結婚するんだ。」



5月の半ば、4歳年上の彼は、突然私にそう言った。



「…え?」



学校から出された課題とにらめっこしていた私は、ゆっくりと顔を上げる。



机越しに私と向き合っているその顔には、照れくさそうな、幸せそうな笑顔が浮かんでいた。



「…爽ちゃん、冗談でしょ?」



声が震えないようにしながら精一杯の思いでそう言うと、爽ちゃんはひどいなぁ、と笑ってみせる。



「本当だよ。交際2年目の彼女と、結婚するんだ。」



周りはまだ早いって言ってるけど、でも…爽ちゃんは言葉を続けるけれど、私の耳にそれは届いていなかった。



…だって、いきなりすぎるよ…私の気持ちなんか、少しも知らないで。