池田屋の二階には、長州、土州、肥州、播州、作州、困州、山城などの藩士二十三人が集まっていた。
五ツ(午後八時)の約束であった。
長州の桂小五郎も来会することとなっていた。
 桂がいったん池田屋を去った後、同士一同集まっていた。

 長州 吉田稔麿、杉山松助、広岡浪秀、佐伯 威雄、福原乙進、有吉熊太郎
 肥州 宮部鼎蔵、松田重助、中津彦太郎、高木元右衛門
土州 野老山五吉郎、北添 麿、石川潤次郎、藤崎八郎、望月亀弥太
播州 大高忠兵門、大高又次郎
困州 河田佐久馬
大和 大沢 平
作州 安藤精之助
江州 西川耕蔵

といった顔が並んでおり、二階では会合がはじまっていた。
 それから二時間が経って、二階では酒を汲み交わしていた。酒はしっかりまわっていた。
 近藤が池田屋に到着すると、それに続いて、総司、藤堂、永倉、近藤周平だけである。あとは、表口、裏口にまわっていた。
「御用改めであるぞ。」
池田屋の亭主は目を大きく開くやあたふたと、二階へつながる階段を何段か上がり、大声で叫んだ。
「お見廻りの役人でございます。」
近藤はそんな亭主を横から殴り投げ飛ばすと、亭主は土間に転げ落ちた。
二階には声が届いてはおらず、同志が遅れてきたのであろうと思っていた。
「上だ。」
近藤が階下から見上げ声をかけると、階段を上がった。それに永倉も続いた。
「御用改めでござる。」
一瞬の後にすべては闇に消えた。