昼休み、尊が僕の席に来て開口一番に言うのはこのセリフ。

「馨、飯」

 そうして僕が作ってきたお弁当を尊に渡す。

 尊が僕の手作り弁当を食べて、僕は買ってきたパンを食べる。

「なんで馨はいつもパンなんだ?」

「僕はパン派なの」

「それで足りんのか?」

「足りるよ」

「嘘つけ、ガリガリじゃねえか、もっと筋肉つけろ」

「いいの、僕は色白の清廉潔白な男子を目指してるんだから。それに僕は逞しさじゃなくて顔と頭で勝負してるの。どっかの筋肉馬鹿とは違うよ」

「誰だ?筋肉馬鹿って」

 すっとぼける尊を無視して、僕はパンをかじった。

 尊は実にいい体をしている。

 中学生のときに「男は筋肉だ」と言い始め、あっという間に腹筋が割れた。

 引き締まった体に思う存分抱きつきたいと何度願ったことか。

 毎日の登下校のときだけ、その体に抱きついてもなんとも思われない。

 だから朝は楽しいし、帰りの時間が近くなると嬉しくてたまらない。