「あの、馨くん!これ、受け取ってください!」 今日もう何度目かわからない同じセリフ。毎年繰り返される恒例行事、バレンタイン。 「ありがとう」 爽やかな笑顔で返してうざったい集団を追い払う。 甘いもの嫌いな僕は、こんなチョコ菓子なんて食べられないのに。 毎年毎年、飽きもせず作ってくる女の子たちは本当に何を考えているんだか…。 そんなことしたって、僕の意識の中にいれるのはほんの一瞬だけで、すぐ忘れてしまうというのに。