バレンタイン当日の朝、手作りケーキを片手に尊の家に行った。

 まだ寝てる尊の部屋に入って布団をめくる。

 そこには愛おしい尊の寝顔があって、何度キスしてしまいたいと思ったかわからない。

「尊、朝だよ」

 冷静に声をかけて尊を起こす。

「ん、あー」

 尊は伸びをして僕を見た。正確には僕の手にある箱を見た。

「さっそくもらったのかよ…クソイケメンが…」

「ち、違うよ、これは、その…僕が作ったの」

「…好きな人にあげるために?」

「尊のためだよ」

「えっ、まじ?ありがとう!」

 尊は驚いたまま受け取ると、一階の居間に持って行って箱を開けた。

「これマジで馨が作ったの?」

 尊が驚くのも無理はない。

 僕が徹夜してまで作った自慢のチョコレートケーキだ。

「うまっ!すげえな馨!店と変わんねえよこれ!店よりうまいかも!」

「そんな、大袈裟だよ」

 尊が喜んでる顔が見れて良かった、と心から思った。

 最近の尊は様子がおかしかった。

 僕と距離を取りたがるというか、その割りには僕のことすごく見てるし。

 もしかしたらもう気付かれてしまったのかもしれない。

「馨、本当ありがとな」

「う、うん、どういたしまして」

 尊の改まった言い方に少しドキッとした。