指先に囚われて…



長い黒髪はくるりとお団子にして、サイドにゆるくまとめる。


最後にお気に入りの翡翠の珠簪をさして、笑顔を作って準備完了。


『さてと…行きましょうか』






…―


 「美弦ちゃんっ!こっち来て、一緒に飲もうよっ!」


『あら、藤さん今日はもう酔っていらっしゃるんですか?』


「酔ってないよ~♪それとも、酔ってたら美弦ちゃんが介抱してくれるんか~?」


微かなアルコールとカウンターに並ぶ和食を中心とした料理の匂いが漂う店内には、陽気な笑い声と温かさに包まれている。