それから1週間の間は、何も無かった。

咲と慧は授業で顔を合わせる以外になんの言葉も交わさなかった。


授業中も、今まで以上に

まるで不自然な程目も合わなくて。



だけど逆に、心の中はどんどん澄んでいくようだった。





放課後。


階段を上っていた咲は、下ってくる慧と鉢合わせ、目が合った。

お互いの足が止まる。



話がしたい。

少しでいいから。



だけど、声にならない。



慧は今来た階段の上と、下を見て人が来ないことを確認すると



「せんせ、ちょっと来て」


そう言って階段を上り出した。



しかしそんな慧に咲はついていけない。

ただ慧を見るだけで、一歩も踏み出せないのだ。


ついていって、どうなるというのだろう。



一体何をどう話せば・・・・





2、3歩階段を上った慧だったが、

咲がついてこないのを見ると黙ってまた下りて咲の腕を軽く引いた。




「こっち。早く」