「なになに、どうしたのよ?」

「やっぱり綾野先生はすごいです」

「ええぇ・・」


「ベストセラー作家で映画化とかドラマ化とかバンバンされてるし・・・テレビに出ても堂々としてて気のきいた事もさっと言えるし。

同じ先生って呼ばれる立場なのに、私なんて・・・・」


「咲ちゃんよくやってるじゃない。それに私なんて、なんて言って欲しくないな」


「だって、私なんて生徒には舐められてるし、学校一の美少女に目を付けられるし」


「咲ちゃんは真面目だからね」



綾野は穏やかな口調で言って微笑む。


「やっぱり私、教師に向いてないんです・・・」

「じゃ、教師なんて辞めちゃえば?」


咲が驚いて顔を上げると、綾野は変わらない笑顔で咲を見ていた。


「そんで俺のブレインになってよ」

「先生のブレインなんて・・・私に出来るわけないですよ」


「どうして?俺がミステリ書けてるのも、咲ちゃんが科学トリックとか

細かいトコまで監修してくれてるおかげだよ」


ミステリー作家である綾野は、咲がまだ学部生だった頃

当時の教授にトリック監修を頼む為に、咲のいた研究室によく顔を出していたのだ。


それがなぜか教授に雑用を押し付けられる形で咲が綾野の

相手をするようになっていた。


咲が研究室を離れた今も、綾野は度々咲にそれを依頼している。