表参道から一本入った裏路地で、肩で息をするふたり。
「は・・・・は・・・・大丈夫?せんせ?」
「・・っ・・・・・」
咲の息はまだ整わないらしく返事が返ってこない。
あたりを見回す慧。
近くに自動販売機。
「せんせ、ちょっと待ってて」
レモン味のスポーツドリンクを買って差し出す。
「・・・・あ、りがと・・・・」
それをひとくち飲んでようやく落ち着く咲。
「てか、先生なにやってんの?」
「・・・・・・・・・」
「やっぱ隙だらけなんだな、先生って・・・・」
「なんか白河くんに助けられてばっかりだね、私」
「いいよそれは、別に・・・・・・使ってとか言ったし・・・」
「・・・・・・私ってそんなにその・・隙あるように見える?」
咲は手に持ったペットボトルを見つめながら言う。
「・・・・・ていうか・・・なんか・・・・」
「なに?」
「・・・・・投げやりみたいに見える時ある」
「・・・・・・」
「うまく言えないけど・・・・」
「私・・・・・自分が好きじゃない」
何言ってるんだろうか、突然こんな事。
こんな所で、しかも生徒に。
「投げやりって言うのも、そうなのかも。
自分を大切に思えないから、自分で自分を守れないのかも」
咲がふと目を上げると慧はじっと咲を見つめていた。
急に居心地が悪く感じられる。
「・・・・・なんで?」
「え?」
「なんで自分の事好きじゃないの?」
「それは・・・・・・・」
「・・・・・・ごめん、いいよ別に言わなくても」
「・・・・・・」
「ねえせんせ、お茶おごってよ。助けたお礼にさ」
黙った咲と、その場の空気を変える為か
少し大きめの声のトーンで慧が言った。
「スタバのテイクアウトでいいからさ」
カフェに入っていく咲と慧、それを見ている人物がいた。
咄嗟にスマホを取り出し写真を撮る。
そこには楽しげに笑う慧と咲が写っていた。
