校舎の屋上。


壁にもたれてコンクリートに座る慧。

その脚の間に姫華が向き合ってすっぽりと入りキスをしている。



「あ、、れ?」

「なに?」

「コーヒーの味・・・・」

「・・さっき自販で買って飲んだから」

「そーなんだ、コーヒーなんてめずらしいね」

「そ?」


なんとなく腑に落ちない様子の姫華に、慧からキスをしかける。

片方の手を後頭部に回し、もう片方の腕はその細い腰を抱き寄せる。



「・・・っ・・・ふ・・・」


口内を舌で掻き回し、唇を甘噛み。
頬、こめかみ、耳たぶ、へ、かすかにちゅ、と音の出るキス。
首筋からワイシャツの胸元ギリギリまでを舌でなぞり
鼻の頭と額、そしてまた唇へ戻ってくる。



「ん・・なんか・・・・」

「なに?」

低い声。



「嬉しい・・・・慧からこうやってキスしてくれる事、あんまないから」

俯きながら言う。

「なんか恥ずかしいな・・けど、幸せ・・・」

「・・・いつもしたいよ?」


慧がそう言うと、唐突にぽたぽたと制服に雫が落ちる。


「・・なんで泣くの?」

「なんでかな・・・・分かんない」


姫華は泣き笑いで顔を上げる。

慧は頬の涙を親指で拭ってやると、優しく抱きしめた。




「泣くと姫華の嫌いなブスになるよ」

「うん・・・・今泣き止む」

「いいよ、ずっとこうしてるから」


慧は姫華が泣き止むまで、陽の落ち始めた屋上で

姫華の震える背中をただ抱いていた。