「はあ〜っ。」

ご飯を食べお風呂に入った後、私はベッドに飛び込んだ。心がもやもやする…。あぁもう、本当に何なんだろ……。


「河田桂一郎…綺麗な人だったな〜…。」

そうつぶやくと、私はそっとまぶたを閉じて眠ってしまった。




『ジリリリリリ!!!』

「うぅ〜っ、」

うるさい時計のベルで目を覚ました。時刻は7時。

…ん?7時………っ!

「きゃー!遅刻しちゃう!」

私は勢いよくベッドから飛び降りて、支度を始めた。私の通う学校は遠くて、7時に起きたのなら遅刻をしてしまう。

「あ、典子。おはよう。今日は遅いわね。」

「おはようあけちゃん!大変なの、遅刻しちゃう!」

「もう、しっかりしなさいよ。ほらお弁当。」

「ありがとう!いってきまーす!」

10分で支度を整え、慌てて友達との待ち合わせ場所へ向かった。着いたとき既に、いつも一緒に登校している妃芽がそこにいた。

「ご、ごめん!遅くなっちゃった…。」

「おはよ、典子。そんなに待ってないから大丈夫だよ。」

妃芽はどこかの会社の令嬢で、かなりの大金持ち。それなのにそう感じさせない彼女のサバサバした性格が私は好き。

しかも顔は可愛らしくて、私とは正反対だ。

「ありが、と…」

ここまで全速力で走ったから呼吸が荒い。途切れ途切れで話すことしかできない…。

「ちょっと、大丈夫!?そんなに慌てなくてもいいのに…もう。」

「だって…遅刻は嫌だもん。」

「今まで無遅刻・無欠席なんてすごいわね。あたしなんて毎年一回は休んじゃうのに…。」

「えへ、へへ…。」

そう、実は私今まで無遅刻・無欠席なのです。だからぜっったい学校に遅刻したくないの!

「じゃ、行こっか。」

「うん。」

私たち二人は楽しく喋りながら学校へ向かった。
この先に起きることを全く予想せずに──。