時計を見ると夜の7時。誰かな?

「は〜い…。」

パタパタとスリッパの音をたてながら、私は玄関に向かった。

『ガチャ』

ドアを開けて中に招き入れようとした。でも…そこに立っている人を見て──



一瞬、時間が止まった。


「…こんばんは。」

そこには長身の男の人が立っていた。髪は黒くて、少し長め。しかも鼻が高くてものすごく…

「綺麗……。」

「…は?」

私は完全にそこにいた男の人に見惚れていた。

「あのさ、頭大丈夫?」

「………え?あ…す、すみません。」

彼に話しかけられてやっと正気に戻った。どうしたんだろ、私…。さっきからドキドキが止まんない…。


「…朱美いる?」

「あ、あけちゃんなら今寝てます。疲れてるみたいで…」

「……そっか。じゃあいいや。朱美にまた来るって伝えておいて。」

そう言うと、その男の人は後ろを向いて帰ろうとした。


その時、私は無意識に彼を呼び止めていた。


「あっ、あの!!」

「…なに?」


「名前…教えてくれませんか?」

「…河田桂一郎。朱美の知り合いだよ。」

「河田、桂一郎…」

「……じゃ、朱美によろしく。」

去っていく彼の背中を見ながら、私はその名前が頭から離れずにいた。


“河田桂一郎”


すごく、綺麗な人だったな……。


彼の後ろ姿が見えなくなるまで、私はその場から動くことができなかった──。