その顔は、付き合い初めの時に真田君があたしの前でよく見せた顔。
もう好きじゃないはずなのに、懐かしい気持ちが胸に込み上げた。
本当、今さら何言ってんの?
遅いよ。
遅いんだよ。
あたしがどれだけ傷付いたと思ってんの?
あそこまで言われて、挙句に振られて。
他に好きな人がいるんでしょ?
そう言ってたじゃん。
喉元まで出かけた言葉達は、声として発せられることなく胸にストンと落ちて行く。
やり場のない感情を、どうすればいいのかわからない。
結局、断りきれずに強引にファミレスへ連れて来られた。
「いらっしゃいませー、2名様ですか?」
こんなところを晴斗に見られたら……。
誤解されるかもしれない。
そう思うと席へ案内されている間も座ってからも、うつむかせた顔を上げることが出来なかった。



