反則だよ。
不意打ちだよ。
横断歩道を渡り終えそうになった時、あたしは覚悟を決めて気合いを入れた。
「あ、あたしね……」
晴斗のことが……っ。
「好き、だから……っ」
ちょうどその時だった。
「は、晴斗?」
遮るように、晴斗の名前を呼ぶ可愛い女の子の声が聞こえたのは。
顔を上げると、そこには里緒並みに容姿の整った美少女が立っていて。
晴斗に向かって優しく微笑んでいた。
だ、誰……!?
なんで晴斗のことを。
「早苗(さなえ)か?」
ーードクン
嬉しそうな晴斗の横顔を見て、さっきまで緊張していた気持ちが一気にしぼんで行く。
代わりにモヤモヤが広がって、胸の中が暗い影に覆われた。



