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「ね、あの映画見たいって言ってたじゃん。一緒に見ようよ、25日!」
25日ね。俺の誕生日ね。
分かって言ってるのは丸見えだが、小春は俺にそういってほしいのだろうか。
きっと俺の誕生日一緒に過ごした
いんだな。
こういうところがかわいいな、とは思う。
同時に、5年間も一緒にいると正直ときめきはない。
服を脱がせる時だって、今では恥じらいすら感じられない。

最初は何となくだった。
付き合っている時は甘やかして、優しくしていたけど、今は思い切り冷たくしている。
自分に好意を抱いている女に冷たくするというのは、意外にも自分の喜びになり、今では癖になっている。

だから、こんな俺だから、小春と付き合うとなると少し心配な面がある。
これ以上冷たくしてしまわないだろうか。
小春が今も悲しんでいるのは分かっているのに。

唯一安心できるのは、なぜか小春は俺に想いを告げてこない。
もちろん小春のことは好きなのだが、今告げられたら俺はどうするんだろうか。

今は、考えないようにしている。

「誕生日ね、俺予定あるの。」
「えー、仕事休みって言ってたのに。」
あ、ほっぺ膨らんだ。
怒ったふりして、悲しんでるんだな。
あー、かわいい。
「はいはい。すまんすまん。」
小春のほっぺの膨らみをつつきながら、いつも通り感情を入れずに謝った。

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