砂~限りある時間のなかで~

歓声の主は誰なのかって、すぐ分かる。

「深田くん、髪の毛切ったぁ?」

「分かる?」

「分かるよー。またかっこよくなったね。」

「照れるな。ありがとう。」

本当だ。
長かった髪の毛がさっぱりしてる。
また一段とかっこよくなってる。


女子と楽しそうに話してる深田くんは一瞬私と目が合ってニコッとした。

でも、それを瞬時に逸らしてしまった。


無意識だった。

また彼に顔を向けられなくて、その場から逃げた。



「大丈夫?」

「大丈夫だよ。」

「辛いんじゃないの?」

「そんなことないよ。」


辛くないといえば嘘になる。
だから、口に出してはいけない。
余計に辛くなるから。