砂~限りある時間のなかで~

「ゆうき…」

必死で声を出すみずき。



「どうした?」

「ゆうき…」

無理して出さなくていい。


俺はみずきに近づいた。


数センチの距離。


間近の顔になり、

俺はみずきの唇にキスを落とした。




その瞬間、
みずきの目から涙がこぼれた。



「すき…」




その言葉を残し、


目を覚ますことはなかった。




俺は泣いた。



号泣した。




ここまで泣くことなんてないのに、こんなにも辛いことはない。




大切な人が失うことの重さに抱えられなかった。




ナナセさんやみずきの家族はみずきの姿を見て涙を流した。



これが現実。

それとも、夢なのか?




俺は病室を出て走り出した。