「好きかどうか分からないって…だったらなんで付き合ってるの⁉︎ 」

年明けの練習日、思いきって夏芽に相談した。
私がカズ君と付き合いだして半年以上経つのに、今だにキスだけだと知った夏芽は、ビックリしたような顔をしていた。

「私はもうとっくにそんな関係かと思ってたのに…」

呆れるのも当たり前。世間一般としてはきっとそうだから。

「カレシ、体育会系男子でしょ?ガッついてこないの?」

下品な言い方。でも、そう言われても仕方ない。

「…何度か迫られそうにはなったよ…クリスマスデートの後も誘われたけど…ごめん…って断った…」
「うわぁ〜最悪だよそれ!男にとってはさ…」

大げさに言う夏芽の言葉に気落ちする。

「うん…分かってるんだけど…どうにも身体が言うこと聞かなくて…」

ギュッと握る手。カズ君のことを決して嫌いとは思ってない。自分のワガママだとも思う。でも…ダメ。触れてほしくない…。

「カズ君のこと…カレシと言うより弟みたいに思ってしまう時があって…だからかもしれないけど…」

肉親みたいに近くで育ってきた関係。幼い頃の事しか知らないのに、何故かそんな風にしか思えない。


「真由は…一途だったからね…昔から」

何事も…と、夏芽が呟く。そう言われると、ぐうの音も出ない。いつだったか、あの人からも同じ事を言われた。


「朔ん時と同じなのかな。今の真由は…」

夏芽の言葉に彼女を見る。ふ…と微笑む瞳がどこか寂し気。何が言いたいのか、なんとなく察しがついた。

「…真由はさ…」

ゴクッ…と唾を呑み込む。聞いてはいけない…と、とっさに思った。


「ウーッス!」
「ごめーん!遅くなって!」

勢いよく開いたドアからハルとシンヤが現れる。
ホッとする私。夏芽は小さく舌を打った。

「あんた達、遅すぎ!」

噛みつく夏芽に二人が圧倒される。その様子を見ながら、一人、安心してた。


練習中、夏芽は何も聞いてないように接してくれた。
言いたかった言葉を口にすることもなくいてくれたおかげで、何も考えずに済んだ。