引き寄せられように、強く抱きしめられた。力が強すぎて、苦しいくらいだったけど、安心した…。

「真由子が好きだ…だから大事にしたいって思った…。でも、本当はずっと…触れたくて仕方なかった…」
「…カズ君…」

ぎゅっと握った手の中に、安心感と温もりがあった。自分が求めていたのは、これだったんだと、勘違いした…。

カズ君との二度目のキス。

…触れる指先も唇も、私から寂しさを遠ざけてくれた。側に彼がいてくれることの喜びが、その時の私を救ってくれたーーー。


ーーーーあれから夏が過ぎ、秋になり、冬が来て…あの人が旅立った日が、また近くなる。丸三年。何もの音沙汰もない彼は、今頃、どこで何をしてるんだろうか…。




「真由子?どうした?」

カズ君が不思議そうにする。少し思い出すつもりが、随分長いこと考え込んでたらしい。

「ううん…別にどうもしないよ。カズ君達、今日勝てるかなって、どうやって応援しようかなって考えてただけ!」

握られた手から伝わる彼の気持ちはあったかい。自分も同じくらいの気持ちで、彼をあったかくしたいと思う。

…でも、冬が来るとだめ…。

あの日の喪失感が襲ってきて、どうにも心が乱れてしまう。カズ君に対して、最初に抱いた居心地の悪さが顔を出して、どうにも気持ちが噛み合わなくなる。

何かを我慢してるような気になる。我慢しなければならないことなんて、何一つ、ない筈なのに……。


「…あっ、ヤベェ、遅れる!真由子、走るぞ!」

手を引っ張って走り出す彼について行く。この手を放したくないと思っているのに、心の中では、

(お願い…放して…)

そんな言葉が繰り返される。

自分の気持ちと心が真反対の音を奏でる。不協和音のように居心地悪くて、いつまでも胸を軋ませていたーーー。