「俺は、ちぃとの約束を果たすためにこの町に来た」
「……え?」
彼の帰ってきた理由がまさか何年も前に交わした約束のためだなんて予想もしてなかった。私は覚えていないが彼は覚えているのだろうか。
「約束って何?」
裕くんは奏くんに約束のことを聞いた。聞いてくれたのは好都合だ。もし、私が聞いたらきっと彼は私が約束のことを忘れていることにショックをうけると思う。
「ん?それは、俺が戻ってきたら、また俺と付き合うって約束」
「「!?」」
思い出した。そうだ、あの日彼はこう言ったんだ
「僕、絶対戻って来るから…戻って来たら、また僕と付き合ってくれる……?」
その頃の私の返事はもちろん
「うん……。絶対だよ……!絶対絶対だよ!」
彼はまだこの約束のことを覚えていたのだ。さすがの裕くんも隣でびっくりしていた。
だが、彼がいくらあのときの約束を覚えていようが関係ない。彼には悪いが今の私の目には裕くんしか写っていない。
「……奏くん、あのね……」
「今のちぃは俺のものだから、残念ながらその約束は果たせないよ?」
そういいながら裕くんは私の頭をそっと撫でた。裕くんの方を見ると目があった。ヤバイ。すごくドキドキする。そんな私を見てすごく優しそうに笑う。やっぱり、どんな顔をしていても裕くんはかっこいいと思う。ドキドキが止まらなくて目を反らしてしまった。
恥ずかしくてもう一度彼の顔を見れない。前を向くと奏くんは目を開いたり閉じたりしていた。
「えっ!マジで!?」
「……うん」
約束のことを忘れて恋をしてしまった私のことをどう思うのだろう。いろいろなことが頭をよぎる。奏くんはこのあとなんて言うのだろう。私には全く予想がつかない。
しばらくの沈黙の時間が流れ奏くんは口を開いた。
「やっぱり彼氏いたのかー!覚悟はしてたけどやっぱりショック……」
床にしゃがみこんでしまった。
「ちぃ、昔からかわいいから、きっと彼氏いるんだろうなと思ってたけど、マジでいた……」
奏くんは小声でぶつぶつ呟いていた。昔からかわいいからって、昔はかわいいなんて言わなかったけど、そう思ってくれてたんだ……。私、全然知らなかった。
「……じゃあ!」
何かひらめいたかのごとく急に立ち上がった。突然のことで私も裕くんもびっくりしてしまった。
「俺はもう一度ちぃのこと、振り向かせてやる!そんで、祐介より俺のことを好きにさせてみせる!!」
二話完三話へ続く