「僕、絶対戻って来るから…戻って来たら、また僕と…」


あれは確か、小学5年生の冬、大好きだった男の子が転校すると聞いた日だった。我ながら恥ずかしくなるぐらいラブラブだった。そんな彼が転校するって聞いたときは信じられないぐらい涙が出たし、二人になったときにどんな会話をしていいのかわからなくなった。そんな私に彼はいった
「僕、絶対戻って来るから。戻って来たら、また僕と…」
そのあとがどうしてかいつも思い出せない。
でも、いいんだ。今の私は彼への思いはないし、それに…
「…ぃ?おーい!ちぃってば!」
「…!あっ、ごめん…ぼーっとしてた…」
それに、今は一緒にいるだけでドキドキが止まらないくらい好きな彼氏がいる。
「全く、いつにもましてぼーっとしてるなー?まぁ、そんなところも好きだけど…///」
赤面してる彼を見ると私まで顔が赤くなる。このドキドキは自分ではどうしようもできない。付き合って半年。でも、彼への思いは覚めるところを知らない。自分でもびっくりするくらい好き。好きで好きでたまらない。そんな幸せの時間を崩したのは担任の声と予鈴だった。
「じゃあまた後で…!」
子供っぽい笑顔で別れを告げ、自分の席へ戻る彼に小さく手を振りながら、時間が止まればいいのにとか思った。
クラスのみんなが席へ戻り、先生が教壇に立つ。
「えーっとー…、今日は皆さんにお知らせがあります。」
身長が低く大きな眼鏡をかけ、パイナップルのような髪型をしている女性。それが私たちの担任、岩原 里桜先生。先生は少し顔が赤くなっていた。熱でもあるのかと思ったが、その理由がすぐにわかった。
「じゃ、じゃあ入って来てください」
そういわれて一人の男子が教室へ入ってきた。少し赤みの強い髪の毛の男子。身長は180㎝は絶対にあると思う。
「要田 奏悟です。よろしくお願いします。」
名字は知らないが、どこかで見た名前な気がする。そんなことを考えていると目が会った。目が会ったことにびっくりしたが、相手もなぜかびっくりしていた。
「では、要田くんは北本さんの隣の席に座ってください。」
そういわれて私の横まで来た。
「人違いだったら悪いけど、ちぃ?」
「!?」
どうしてこの人が私のあだ名を知っているのだろう。頭の中にははてなしか出てこなかった。
「やっぱり!合っててよかったー!」
とても安心しているがこっちはなんにも良くない。
「あの…、どちら様?」
「えっ!覚えてないの!?俺だよ俺!」
全くわからない。この人オレオレ詐欺ですか?
「まぁ、名字変わってるからわかんないかもなぁ。篠原、篠原 奏悟っていえばわかる?」
「!?……奏くん……!?」
「合ったりー♪」
そう、思い出した。彼は、彼こそは小学5年生のとき、大好きだった男の子。奏くん。でも、昔はあんなに好きだったのに、今はなんとも思わない。奏くんはちょっとだけ、顔が赤くなってた。
「あの…早く席についてもらえますか?」
先生の一言で我に戻った奏くんは先生に軽く謝罪をし、席についた。そのあとの先生の話の最中チラチラと私の方を見てくる奏くん。何かと思ってそっちを向けば窓の方へ目線を反らす。また前を向けばチラチラと私の方を見てくる。そしてまたそっちを向けば窓の方を向き目線を反らす。それの繰り返しだ。いい加減うざくなってたため、途中からは無視をしていた。そんなこんなで先生の話は終わった。それと同時に少し離れた席の彼がこっちに歩いてきた。
「あっ!祐くん!」
「よっ!」
目が会った瞬間に頬が少し熱くなったのを感じた。
「まさか、転校生くんがちぃの友達だったなんて思わなかったよぉ。俺、椎那 祐介。よろしく」
祐くんは誰にでも優しい。もちろん女子にも。だからたまに嫉妬する。
「こちらこそ!」
昔と笑った顔は全然変わっていないように見えた。
そういえば、昔、彼と何か約束をしたはずなのだけれど、やっぱり
思い出せない。肝心なところが全然思い出せない。
そもそも何故彼がこの町に戻ってきたのだろう。多分よくある親の事情だと思うが聞いてみることにした。
「ねぇ、奏くんはどうしてこの町に戻ってきたの?」
奏くんはにっこりとしてこう言った
「俺は、ちぃとの約束を果たすためにこの町に来た」
一話完 二話へ続く