「かわい」

「う、ぁ…」


顔を隠したかった狼さんですが赤ずきんちゃんに両手を捕まれてるので、それは叶いません。


「狼さん、残念だけどとてつもなくがっかりしているけれど、此処にはおばあさんもいることだし、今この場で狼さんを食べるのはやめておくわ」


でもね、と赤い唇を狼さんの大きなお耳に近付けて彼女は呟きます。


「貴方を必ず食べるわ。私、――――狙った獲物は逃がさない主義なの」


こうして狼さんは強制的に赤ずきんちゃんに連れ去られ、さらには彼女の説得によりお母さんに認められてしまい、仲良く三人で暮らしましたとさ。


「な、仲良くなんかないっ!」

「あら…、仲良くないの?」

「う、あ…」

「私は狼さんのことこんなに可愛がってあげてるのに…」

「だ、だから近付かないでっ!」

「ふふ、照れなくてもいいのよ? ……可愛い」

「っ、 て、照れてなんかないってばーっ!」


さて、物語はまだ始まったばかり。


「ほら、こちらにいらっしゃい?」

「い、行かないよ!」

「……あら、じゃあ私が行こうかしら」

「こ、来ないで! き、来たら本当に食べちゃうから…!」

「っ」


勝つのはどちら?



【END】