飛ばされる種を見て、千鳥の言った言葉の意味が分かった気がした。





「……この種もいずれ、タンポポになるのかな。」



「……お前が飛ばした種だ。絶対なる。」





「ありがとう、昴。」





千鳥の笑顔は暖かかった。



どこか落ち着くような、優しい微笑み。





「……あたしの分も、大きくなってほしいな。」





昔から千鳥は優しくて、


昔から千鳥は強くて、


昔から千鳥は人気者だった。



沢山の人に囲まれていた。





……そんな彼女が、今月いっぱいでいなくなる。



二度と、会えなくなる。





「……千鳥、部屋に戻ろう。」





そんなの、信じられなかった。