夢幻泡影

土方は、瑛が風呂場でまた心に影を宿していたことが心配だった

「これ履いてくれ」

女物の下駄を出された


着物も下駄も監察方の物



屯所を出て、町へ



瑛は京の町をはじめて歩く

食事をしていないせいか、ふらふらしている

土方は瑛の手をひき、寺に入る

「疲れたか?」

首を横に振る

「ふっ。そうか。」

〝気を使わせたか…?〟


土方は瑛を座らせ、頭を撫でる


「名前……なんてぇんだ?」



反応のない瑛に戸惑う


「あるよな……?」

頷く


「言いたくない?」


瑛が首を傾げる


「そのうち教えてくれ!いつも、おい!じゃあ、あれだろ?」


瑛がまた首を傾げる



『名前…必要?』


瑛は江戸にいるときから、この一年間名前を呼ばれていない


「なぁ?腹減った?」

横に振る

「ずっと食べてないだろ?」

縦に振る

「食べて元気になって、もっと色々なとこ散歩しような!」


瑛が勢いよく、土方を見る


『どうして優しくするの?』


「いやか?」

ぶんぶんと横に振る

「ぷっ。嬉しいか?」

土方をしっかり見て頷く


土方が瑛をふわっと抱きしめる


「ずっと新選組にいろよ!守るからな!」


土方の腕の中で、瑛が頷く




『新選組といたい!綺麗になりたい!』






『お千さんも言っていた、幹部さんは守ってくれる。信じていいって……』








屯所まで土方の手を握って帰った