夢幻泡影


瑛が風呂から上がったら、山崎が髪を結うことになっていた

「副長、遅ない?」
「そうだな。見てくる。」

土方が風呂へ行くと外で、松原がおろおろしていた

「あ!副長!!
あの子出てこないんです!声かけても反応ないし!どうしましょう!!!」

よほど慌てているのか、一気に喋る


「おい!!大丈夫か?」


戸に耳を当てる。中から何の音も聞こえない。

「おい!! 開けるぞ!入るからな!」

「え?副長!!いんですか!?」

「倒れてたらどうすんだ!!」

ガラガラ

!!!!

「お前……ずっとそこに?」


瑛は入口で座り込んでいた

「はあー。よかった!!心配したんだぞ?」

土方は、瑛が反応示さずにいることに困惑した

「松原!」 「はい!」

「お千を連れてきてくれ。」 「?はい。」





「土方さん何です?あら!この子!」

「ああ。風呂に入れてやってくれねぇか?」

「へぇ。わかりました。」

「外に松原がいるから、なんかあったら言ってくれ!」

「はい。」


ガラガラ

土方が風呂を出てから、お千は瑛の寝間着を脱がした。

「この寝間着は、藤堂さんのやで。あんさんが運ばれてきた日、あんさんの体拭いて、うちが着せたんや。」

そう言ってから、お千も着物を脱いだ

「こっちおいでや?」

優しく手を引く

お湯をかけた後髪や体を洗う

「あんさん、酷い目に合いはったんやな。もうなんも気にせんでええよ。
ここの幹部さんは皆優しいんやで?
局長さんは、あんさんみて泣いてはったし、他の方々はおろおろ心配してな。
武士やなんて、威張る方たちやない。
ほんまに優しいんよ。」


「さあ。湯に浸かろ?」

お千は瑛と一緒に湯に浸かる

瑛とは、親子ほど歳が離れているが、お千は早くに旦那を亡くして子供はいない。
独り身で通している
お千は自分の話をした
新選組に繕い物の手伝いに十日に一度来ていること
家がすぐ近くで呼ばれてきたこと


「旦那が今も好きなんや。阿呆やろ?」


そう言って笑う


「あんさん、ここで女中になりなはれ!
うちも、皆さんも喜ぶで?
ここにおったら皆が守ってくれるわ!」

反応のない、瑛の顔を両手ではさむ


「よくきくんや!
幹部さんは信じてええ!!
幹部さんの言葉を無視したらいかん!
ええときはこう!嫌なときはこう!
大事にしてくれてはる!無視はあかん!」

瑛の顔を縦、横に振り回す

手を離して


「ええね?」

瑛が小さく頷く

「ええ子やな!!可愛らしいわ!」





『売られないのかな……信じていいの?』





『お千さんは明るい!太陽のようだ!
あたしとは違う。眩しい。お千さんに洗われて、体が綺麗になった。ここの人は皆凄い力を持っている!!』